金融
政府の金融緩和政策に勢いを得て、積極策を講じる金融業界。銀行はメガバンクを中心に海外展開を加速化しており、アジア市場での融資拡大や海外企業の買収等、国際的な地位向上をめざし攻勢中。株高で業績復活を果たした証券は、政府の投資促進策やNISA(少額投資非課税制度)導入等を背景に収益構造の改革中。強靭な体力づくりに邁進する。大規模な業界再編によりメガバンクの存在感が高まるノンバンクは、貸金業法改定後の混乱収束で新たな段階へ。
銀行
企業の資金需要の低迷に日本発のペイオフ発動や大手銀行のシステムトラブル等、事業環境は厳しい。その中で2011年4月に三井住友トラスト・ホールディングスが誕生、2012年の再編完成後はみずほ信託、三菱UFJ信託、三井住友信託の3メガ信託体制となる。信託事業の焦点は海外からの資金が期待できる不動産関連分野。資産運用分野で海外進出を加速化するメガバンクグループとの連携がカギを握る。
証券
世界経済の回復基調に水を差す中東情勢に欧州財政危機の再熱懸念、加えて震災後の急激な円高・株安で市場は混迷。株取引の好転は見込めず、企業の上場も期待薄で、各社は海外での投資銀行事業に収益確保の望みを託す。個人投資家相手に急成長を遂げたネット系証券は参入企業増加による競争激化で業績低迷。低手数料に高売買回転率のビジネスモデルの転換期にあり、目下、収益基盤の多様化に邁進中。
保険
損保は業界3メガ体制に落ち着き、2012年にかけての合併、社内統廃合で再編完成。各社は成長事業の海外保険事業への注力で、海外展開が活性化しているが、ニュージーランド地震にその後の東日本大震災で、厳しい経営が予想される。生保では、今年度決算から厳格化するソルベンシー・マージン比率への対応が急務だが、大震災の保険金支払いが重くのしかかる。損保系生保の再編が既存生保に波及する懸念も。
信販・クレジットカード
改正賃金業法の完全施行が及ぼした大激震が続いている。信販・カードはキャッシング部門の落ち込みが厳しく、独立系はショッピング部門に注力、メガバンク系は統廃合で生き残りをかける。ノンバンクは過払利息返還請求の負担重く、独立系はもとより、メガバンク傘下でも収益悪化が著しい。リースは、リース会計基準の変更で4年連続の取扱高減少が苦しい。内需回復は見込めず各社の視線はアジア成長市場へ。