日本の製造業は、戦後70年の間、様々な困難を経ながらもイノベーションを起こして社会発展の牽引車となってきた。今、長い不況からの業績回復を果たし、次の飛躍に向けた動きを開始している。業界は徹底したコスト削減と構造改革でデフレ下を生き抜き、コスト競争力を鍛え上げてきた。過去最高水準の手元資金というエネルギー(資金余力)もあり、海外M&Aやリスクテークで新市場を開拓する力は十分ある。各業界、新市場に向けてスパートをかける。
英語で「trading company」と表現される商社は、製造物でもサービスでもない、“モノの円滑な流通”を商材に手数料収入を得るビジネスだ。総合商社は多彩な事業領域に特徴があり、時代の変遷によってビジネスモデルを転換する。近年は、先行投資による新市場開拓や産業育成など投資ビジネス事業に注力する。特定分野の商的流通で活躍するのが専門商社。当該分野のスペシャリストとして、商的流通のあらゆるプロセスで付加価値の探索と提供を行う。新たなビジネスの創出や市場形成に尽力するなど、その活動範囲は現在進行形で進化中。
政府の金融緩和政策に勢いを得て、積極策を講じる金融業界。銀行はメガバンクを中心に海外展開を加速化しており、アジア市場での融資拡大や海外企業の買収等、国際的な地位向上をめざし攻勢中。株高で業績復活を果たした証券は、政府の投資促進策やNISA(少額投資非課税制度)導入等を背景に収益構造の改革中。強靭な体力づくりに邁進する。大規模な業界再編によりメガバンクの存在感が高まるノンバンクは、貸金業法改定後の混乱収束で新たな段階へ。
景況感の改善が個人消費を誘い、消費増税後も小売市場は堅調な伸び。百貨店は景気要因に増床改装効果で16年ぶりの市場規模拡大。富裕層やインバウンド(訪日外国人観光客)の取り込みに注力中。人口減少社会に備えた店舗配置を進めるスーパーは、郊外の大型総合店から都市の小型店へ戦略シフト。都心部の出店は一段と競争激化。市場の拡大が続くコンビニは、店舗運営の機動性と商品開発力の差でチェーン間格差が広がりつつある。
景気の回復による企業の海外展開が活発化しており、それに伴いICT(情報通信技術)業界もグローバル化が進展。通信は海外M&Aで事業基盤の強化や新分野の取り込みを展開中。情報処理は民間IT投資の回復でソフトウエア更新やクラウド基盤構築等の需要が拡大中。成長が期待されるビッグデータの取り組みも本格化する。ネットサービスはEC(電子商取引)とネット広告が引き続き順調。スマホ利用のモバイルECに大きな期待が集まる。
景気回復による国内貨物輸送量の増加で運輸業界の業績は改善。だが、国内市場は長期縮小傾向なだけに、陸運・鉄道は内需依存から外需取り込みへ動き出している。電力・ガス業界は小売市場の自由化がいよいよ本格化する。電力は業界構造の変更を伴う大改革なだけに、各社の対応に注目が集まる。内需縮小で生産能力削減が続く石油業界。再生可能エネルギー事業や油田、LNG(液化天然ガス)、資源開発の上流事業など事業の多角化が進行中。
政府の政策支援が奏功し、建設・不動産関連業界の業況は活況。インフラ設備の老朽化対策や事前防災、東京オリンピック関連施設等、安定的な需要が見込まれる建設。懸念材料は労務費、資材費の更なる高騰だ。不動産は、都市部の地価回復やオフィスの空室率の改善などの好材料に期待が高まる。政府支援策の継続が需要を支える住宅は、2015年の消費増税後が節目。リフォーム市場の育成と取り込みに各社しのぎを削る。
国内市場を相手に“形のない財”の提供をビジネスとするサービス業。景気回復により業績は上昇傾向だが、労働者不足の懸念材料もある。典型的な労働集約型業種のフード、レジャー、高齢者サービスでは従業員不足が深刻化。逆に人材サービスは好機と捉えて事業拡大へ。また、ICT(情報通信技術)進展の影響を受けているのが旅行・ホテル、マスコミ、映画・アミューズメント。変化の速いデジタルツールへの対応がシェア獲得の鍵となる。