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業界の特性、現状・将来性、景気動向、国際性、社会性などの項目をチェックすることで、業界への理解を深めましょう!就活の際の業界研究に活かしましょう。

メーカー

製品を生産する企業のことで、製造業とも呼ばれる。業界は大きく、原材料を生産する「素材メーカー」、原材料を使って製品を作る「加工組立メーカー」、原材料から最終製品まで自社で作る「自社生産加工メーカー」に分類される。また、ビジネス対象の違いから、「B to B※1企業」と「B to C※2企業」の2つがある。日本を支える基幹産業のひとつであり、製品品質は世界をリードしている。
IoT※3やAI※4などの最新技術をはじめ、DX※5といった新たな潮流、Industry4.0(第四次産業革命)※6をはじめとするモノ作りの変革にもいち早く対応し、各社とも「高品質」「低コスト」「長寿命」「ブランド化」といった価値創造に取り組んでいる。従来、こうした活動は、社内の人材や技術だけで行われてきたが、近年は開発時間の短縮やさらなる進化を求め、社外の研究機関や大学、企業と連携する「オープンイノベーション」が活発になっている。
※1 Business to Business:企業が企業に向けて商品やサービスを提供する取引形態のこと
※2 Business to Consumer:企業が一般消費者に商品やサービスを提供する取引形態のこと
※3 Internet of Things:さまざまなモノがインターネットにつながり、情報連携すること。「モノのインターネット」と訳される
※4 Artificial Intelligence:人工知能のこと
※5 Digital transformation(DX):「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念。デジタルテクノロジーを駆使して経営の在り方やビジネスプロセスを再構築することで、人とITの関係性を変革し、事業の範囲や業績の上げ方、顧客との関係や従業員の働き方などを、よりよい方向へ変えること
※6 製造の革新をテーマにドイツで進められている国家プロジェクト。IoTやAIを活用した最新の製造革新という意味合いから第四次産業革命とも呼ばれている

電機・電池

日本を代表する有名企業がグローバルな業界をリード
新技術への対応で、モノ作りを新たな次元へ

【基礎知識】
電機業界は、日本トップクラスの業績と事業規模・労働者数を誇り、日本を代表する企業が中核を構成している。事業領域は、家電製品から、業務用の設備機器、発電機や電池などの重電製品、社会インフラまでと幅広い。こうした事業を手掛ける企業が「電機メーカー」と呼ばれ、その中で複数の事業を展開している企業が「総合電機メーカー」と呼ばれている。総合電機メーカーの多くは、2008年のリーマンショック以降、需要がなかなか回復しないことから、事業の取捨選択やM&A※1などを行い、強みを持つ数種の事業に経営資源を集中させた。その結果、強みをさらに伸ばすことで業績を伸ばし、多くの企業が新たな成長路線を進んでいる。

【展望】
業界の成長を担うのは、重電・社会インフラ事業だ。ニーズの動向を地球規模でとらえた戦略の推進が、成長の鍵を握ると考えられている。電池メーカーについては、ハイブリッド車や電気自動車の動向が、今後の成長要因として注目されている。家電事業で勢いを増しているのは、外資系だ。日本の総合電機メーカーの家電部門がアジア系企業の傘下に入り、人気製品を数多く生み出している。業界全体としては、AIやビッグデータ解析※2などにいち早く対応し、新たな価値を実現することが、今後の成長ファクターになると見られている。

※1 Mergers and Acquisitions:企業の合併や買収の総称
※2 大量のデータを収集・分析してひとつの方向性を見出すこと

半導体・半導体製造装置

常に次代の扉を開く役割を担ってきた半導体
通信新時代の到来で、さらに高まる期待と成長

【基礎知識】
半導体は、PCやスマートフォン、自動車、産業機器など、さまざまな製品の中核を担っている電子部品だ。従来、半導体メーカーは企画・開発から製造まで一貫して行う企業が主だったが、現在は開発・設計に特化した「ファブレス企業※1」と、大規模生産設備を保有して受託生産を専門とする「ファウンドリー企業※2」という分業化が、国際レベルで進んでいる。また、半導体メーカーの多くは、データを保存・管理するメモリ、音や圧力を関知するセンサー、演算処理を行うCPU※3・GPU※4など、特定機能を持つ半導体に特化することで、企業の存在感を高めている。

【展望】
市場は今後の数年間、着実に成長すると予測されている。その要因は、さまざまな製品に搭載される半導体の種類が増加するからだ。たとえば、自動車では自動運転や電動化に代表される安心・安全・環境対応を実現するため、車載半導体は一気に増加する。さらに、通信新時代の5G※5や、AI、IoT、VR※6/AR※7/MR※8の実現にも、膨大なデータの高速処理と管理を行う数多くの半導体が必要だ。半導体メーカー各社は、こうした動向を見据え、それぞれが得意とする機能を高度化してニーズに応える半導体の設計を進めている。また、ファウンドリー企業では新たな機能を搭載した半導体の生産に向けて大型の設備投資を継続して進めており、半導体製造装置メーカーのビジネスチャンスも拡大している。

※1 ファブ(製造部門)を持たず、企画・開発・設計のみを行い、生産は外部委託する企業
※2 製造施設を持ち、ファブレス企業からの委託を受けて半導体を製造する生産専門企業
※3 Central Processing Unit:エレクトロニクス製品の処理を中心となって行う装置。中央演算処理装置
※4 Graphics Processing Unit:リアルタイム画像処理に特化した演算装置。CPU に代わって高速演算処理を行うために使用されることもある
※5 5th Generation:第5世代移動通信システム。「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」という3つの特徴を実現する最新無線通信システム
※6 Virtual Reality:現実には存在しない空間を作り出し、その中にいるような疑似体験をさせる技術。仮想現実
※7 Augmented Reality:目の前にある現実環境にさまざまな情報を加えて拡張する技術。拡張現実
※8 Mixed Reality:現実世界と仮想世界を融合する技術。複合現実

電子部品

市場は今後も拡大を継続
日本がめざす未来社会の実現に貢献

【基礎知識】
電子部品とは、モーターや電源部品といった電子回路に使用される部品で、スマートフォンや産業機器など、あらゆるエレクトロニクス製品で使用されている。その開発・製造に携わっているのが、電子部品メーカーだ。B to Bのため、一般の認知度は低いが、グローバルで高いシェアを持つ企業は多い。日本を代表する業界のひとつであり、日系企業のシェアは世界の約4割。高機能・高付加価値部品を中心に、世界をリードしている。

【展望】
市場は、今後も継続した成長が見込まれている。中でも自動車部品は、ハイブリッド車や電気自動車といったエコカーをはじめ、自動運転車やコネクテッドカー※1を実現する部品の需要が、飛躍的に伸びると予想されている。また、工場生産の自動化に伴う高性能なFA※2機器や産業用ロボット、がん治療装置や医療検査装置用部品といった医療機器向けの部品も、成長の牽引役として期待されている。これに加えて、5G、IoT、AIなどが、スマートフォンなどさまざまな製品を革新し、新たな部品ニーズを創出すると考えられている。このほか、単体部品を組み合わせたシステムの提供により、提供価値を高める動きも目立ってきた。業界は、こうした数々のグローバルニーズに応えることで成長するとともに、日本がめざす「超スマート社会(Society 5.0※3)の実現に貢献」することも、目標に掲げている。

※1 ネットワークに接続された自動車のこと。車両の状態や周囲の状況など、さまざまなデータをセンサーで取得し、ネットワーク経由でセンターへ送信。各車から送られてくるビッグデータを分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている
※2 Factory Automation:工場における生産工程の自動化を図るシステムのこと
※3 狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(同2.0)、工業社会(同3.0)、情報社会(同4.0)に続く、新しい社会。仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムで、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会で、めざすべき未来社会のコンセプトとして日本政府が提唱した

精密機器

日本企業が、あらゆる製品分野で世界をリード
医療関連を中心に、蓄積技術の応用を推進

【基礎知識】
精密機器とは、高性能部品と高度な制御技術により、緻密な動作要求に応える製品である。医療機器、光学機器、計測機器、OA機器(コピー・プリンター・複合機)、カメラ、時計などが該当する。いずれの分野でも日本メーカーは世界をリードする先進性を実現しており、グローバルで高く評価されている。業態としては、法人向けに事業を行っている企業が中心。そのほかに、一般消費者向け、および法人と一般消費者の両方に対して事業を展開している企業もある。

【展望】
好調なのは、計測・医療機器メーカーだ。先進国で進む高齢化と、新興国で高まる医療水準の向上ニーズ、さらには福祉・介護領域のニーズも高まっていることから、業績を伸ばしている。加えて、新型感染症が蔓延したことで、未知の疾患が発生したときに早期診断が可能な計測機器が開発できる体制整備への期待も高まっている。こうした状況から、蓄積技術の応用で、医療・ヘルスケア分野へ参入するメーカーが増えている。OA機器メーカーは、既存事業が資料のデジタル化やペーパーレス化で先進国の需要が伸び悩んでいることから、新興国ビジネスの強化とともに、既存技術を応用した医療向けの製品開発を進めている。カメラや時計も新領域への展開が始まっており、ウェアラブルカメラ※1やネットワークカメラ※2といった新市場が立ち上がっている。

※1 身体やヘルメットなどに装着し、ハンズフリーで撮影できる小型カメラ
※2 ネットワークに接続し、撮影した映像をPCやスマートフォン、タブレットなどで共有できるビデオカメラの一種

工作機械

モノ作りを支える「マザーマシン」を提供
世界がめざす先進工場の実現が今後の成長要因に

【基礎知識】
工作機械とは、自動車や精密機器などの完成品を作るために使用される機械だ。「機械を作る機械」であることから、「マザーマシン」とも呼ばれ、モノ作り立国・日本の根幹を支えている。市場はグローバルで、オーダーメイドによる生産が主流。日本は世界有数の工作機械大国で、世界を代表する大手メーカーのほか、数多くの中堅・中小メーカーがある。規模は小さくても高度な技術を持ち、グローバルで高い存在感を示す企業も多い。業績は世界経済と比例する傾向にあることから、経済の先行きを占う業界とも言われている。

【展望】
市場は、今後も高水準で成長すると予測されている。その要因は、すべての完成品で環境性能や安全性の追求がさらに強まり、より高度な加工精度や品質を実現する工作機械が求められるからだ。さらには、全企業が工場生産の徹底した効率化と高品質化を見据え、スマートファクトリー※1の実現をめざしていることも大きい。こうしたニーズに応えるためには、複数の工作機械で行っていた作業を1台で可能にする複合機や、加工作業の高度化・省力化を自動化するロボットの開発、さらにはIoTやAI、5G対応などが必要であり、この早期達成が今後の成長を加速すると考えられている。

※1 ドイツの国家プロジェクト「Industry4.0」を具現化した先進工場のこと。IoTやAIなどを活用して設備同士や人間を高次元で連携させ、革新の工場生産を実現する

建設機械・産業用一般機械

中長期で拡大が続くグローバル市場
日本メーカーの技術革新が成長を牽引

【基礎知識】
建設機械は、油圧ショベル、フォークリフト、クレーンなど、土木・建設工事や鉱山開発などに、なくてはならないマシンだ。日本の大手メーカーは世界トップクラスのシェアを持ち、売上比率も海外が多くを占めるグローバル企業である。産業用機械は、工場のFA機器や産業用ロボットなど、さまざまな生産工程の合理化や省力化を担う機械で、こちらもグローバル企業が多い。どちらの業界にも共通しているのは、景気の動向、特に海外の状況に影響される傾向が強いことだ。

【展望】
2020年を目標に実施されたインフラ整備が終了したことで、建設機械業界の成長は一段落するものの、中長期では拡大すると予測されている。世界各国で、都市やインフラの整備、工場建設、鉱山開発などが、引き続き実施されるからだ。そして、もうひとつの要因が、ICT※1やDXへの対応である。業界全体でめざしているこの分野においても、日本メーカーはグローバルをリードしているからだ。同様に産業用機械でも、ICT・DX対応は、作業面、コスト面、管理面の内容向上に欠かせない要素になっている。また、工場の自動化に必要不可欠な産業用ロボットは、日本メーカーが世界シェアの上位にランクしており、生産性と品質の向上に貢献することが期待されている。

※1 Information and Communication Technology:情報通信技術。情報処理に加え、通信を利用した情報や知識の共有に関連する技術、産業、サービスなどの総称。IT と同じように使われるが、よりコミュニケーションの重要性を強調するときに使用される

造船・重機・鉄道車両・航空宇宙

社会インフラを支える4つの重工業
グローバルを見据えた官民プロジェクトが進行中

【基礎知識】
造船は、日本貿易の9割以上を占める海上輸送を支えており、日本経済に不可欠な業界だ。重機は、発電設備や搬送機器など、社会インフラを支える巨大な機械や装置を製造している。鉄道車両は、電車の開発・製造が中心で、国内向けが約7割。海外競争力も高まっている。航空宇宙は、部品や装置の供給がメインだが、小型ジェットも開発している。どの業界でも、日本の存在感を高めるためのプロジェクトが、官民で進められている。

【展望】
社会インフラの特徴は、既存環境の維持や進化に向けた設備投資が、定期的に行われることだ。1案件あたりの投資規模が大きいため、的確に獲得することが成長のポイントになる。ここ数年で注目度が高いのは、小型ビジネスジェット機の領域だ。日系企業が業界に革命を起こし、グローバルビジネスをリードしている。空飛ぶクルマ※1にも、熱い視線が注がれている。造船では、2025年に世界シェアを3割に高める「海事生産性革命(i-Shipping)※2」を官民で推進。宇宙分野では、内閣府の「宇宙産業ビジョン2030※3」に基づく活動が行われている。

※1 正式名称は「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」。世界中の航空機メーカーや自動車メーカーが開発に着手。都市部でのタクシーサービス、離島や山間部の移動手段、災害時の救急搬送などに利用できるものとして期待されている
※2 IoT・ビッグデータ・AIなどを活用して生産性を向上させる革新技術やシステムの開発・実用化を支援・実証することにより、造船などの海事産業におけるコスト競争力の強化、品質の向上、サービスの革新をめざした国土交通省の施策
※3 宇宙ビジネスの進展を促すため、内閣府が2017年に発表。「宇宙利用産業」「宇宙機器産業」「海外展開」「新たな宇宙ビジネスを見据えた環境整備」を柱とし、市場規模を2017年当時の約1.2兆円から2030年代早期に倍増することを目標に掲げている

自動車・二輪・タイヤ

100年に一度の大変革期を迎え
従来の発想や枠組みを超えた取り組みが加速

【基礎知識】
自動車は、日本を支える基幹産業のひとつで、GDP※1の10%以上を占めている。大手3社はグローバルでも存在感があり、売上高でも販売台数でも世界トップ10にランクインしている。二輪メーカーは、自動車以上に海外戦略が進み、世界シェアは約4割で、業界上位に各社が名を連ねている。タイヤは、消耗品であることから常に一定の需要があり、業界は安定した成長を確保。日本メーカーは、業績でも新機能開発でも世界をリードしている。

【展望】
100年に一度の大変革期を迎えているのが、自動車業界だ。その内容は、Connected(接続性)※2、Autonomous(自動運転)、Shared(共有)※3、Electric(電動化)※4に象徴されることから、「CASE」と呼ばれている。さらに、より一層の燃費改善を求めるCAFE規制※5や、空飛ぶクルマへの対応なども、新たなテーマとして浮上している。こうした要求に応えるため、今後はベンチャーやIT企業など、自動車の枠組みを越えたグローバルな提携が進むと予測されている。市場は中国と米国を中心に、経済が発展する新興国が牽引する見通しだ。二輪業界も、環境対応の視点から電動化を推進。大手やベンチャーから、次々に電動二輪車が発表されている。市場は、インド、中国、東南アジアが中心で、目標は世界シェア50%の獲得だ。タイヤ業界では、高機能タイヤの開発が加速する。センサーで検知した路面情報やタイヤの状態をフィードバックして、自動車や二輪の性能向上に貢献する機能を開発。また、グローバル戦略もさらに進むと考えられている。

※1 Gross Domestic Product:国内総生産。国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値を合計した金額。日本で生活する人々の「消費」と、国内企業が行った「投資」に、「政府支出」と「貿易収入」 を合計した金額
※2 自動車をネットワークに接続し、車両の状態や周囲の状況といった各種のデータをセンターへ送信して分析したり、スマートフォンなどから送られてくる情報と連動させたりすることで、カーナビゲーションや自動運転の機能アップ、自動配車といった新たな価値創造が期待されている
※3 自動車は今後、所有するものではなく共有するものとなり、利用したいときに利用するモビリティサービスが主流になると考えられている
※4 電気自動車のように、自動車の駆動方式を電動化すること
※5 Corporate Average Fuel Efficiency:企業別平均燃費規制。自動車メーカーごとに平均燃費を算出し、燃費が基準値を下回らないことを義務付けた規制。米国、EU、中国で採用され、日本も2020年度から採用

鉄鋼・非鉄金属・セラミックス・セメント・紙・パルプ

技術力の高さなど、それぞれの特徴を発揮することで
グローバル市場での存在感を高め、着実に成長

【基礎知識】
鉄鋼は、モノ作りの基本となる鋼板などを製造し、自動車や建設などに提供している業界だ。業界規模は大きく、日本の主要産業のひとつである。業界を構成する企業は、原料の鉄鉱石から一貫生産する「高炉メーカー」、くず鉄などを溶かして生産する「電炉メーカー」、高度な鉄合金を生産する「特殊鋼メーカー」に分類される。非鉄金属は、鉄以外のアルミや合金などの金属を扱っている業界で、供給先は自動車からスマートフォンまでと幅広い。大手は資源開発から加工までトータルに行っている。セラミックスは、無機物を加熱処理し、誘電性、放熱性、絶縁性、耐食性などを達成した高機能材料を提供している業界だ。半導体や自動車、情報通信、産業機械、医療などの分野で使用されている。

【展望】
鉄鋼需要は海外を中心に伸びており、グローバル戦略を推進する企業が増えている。国際競争は激化するものの、日本メーカーは技術力の高さを強みに成長すると予測されている。また、鉄鋼業界では規模の大きさが競争力の高さにつながるため、合併や提携が国内外で活発になると見られている。非鉄金属は、国内外で需要が多くあることから、中長期で安定した成長が続くと考えられている。セラミックスは、航空宇宙、自動車、電子部品、燃料電池、医療などの需要が国内外で高まっており、市場は着実に成長するとの予測が強い。セメントは、これまで国内需要への対応で伸びてきたが、今後の成長を見込んでいるのは海外だ。そこで、インフラ整備が続く海外での現地生産能力を増強し、高まる需要の獲得をめざしている。紙・パルプは、紙おむつに代表される新たな用途に対応する機能の実現に向けた研究開発が進んでおり、各社の強みを活かせる領域での事業展開が、新たな成長要因として注目されている。

化学・繊維

日本を支える基盤産業のひとつ
先端技術の強化でグローバルな成長をめざす

【基礎知識】
化学業界が取り組むのは、石油や天然ガスを原材料にした樹脂、塗料、薬品などの製造だ。さまざまな業界に製品を供給する基盤産業であることから、市場は巨大で携わる人も多い。企業は、基礎化学品から最終製品の製造までトータルに取り組む「総合化学」と、特定分野に特化した「専門化学」に大別される。繊維業界は、天然・化学繊維の紡糸、製糸、紡績、染色、縫製などに携わる企業で構成される。生活に密着した産業との関わりが深く、近年は高機能繊維の開発で成長している。

【展望】
どちらの業界も、需要の高まりとともに、海外との競争が激化している。そこで日本メーカーは、自社の強みを伸ばすための事業集中や異業種との連携、M&Aなどを進めている。化学業界では、日本メーカーの研究者が「リチウムイオン電池の開発」で2019年ノーベル化学賞を受賞したように、日本の技術力は世界でも高いレベルにあることから、その動向に世界中が注目している。繊維業界は、保温機能や耐環境性などに優れた新素材を開発し、衣料はもちろん、航空機や自動車、さらには風力発電翼やガスタンクといった新用途も開拓している。こうした特徴を最大限に活かし、さまざまなニーズをグローバルで獲得し続けることが、継続した成長のポイントになっている。

化粧品・生活用品

身近で親しみのある企業が中核を構成
成長のキーワードはグローバルと新機能商品

【基礎知識】
化粧品は、メイク用からスキンケア、ヘアケア、フレグランスなど、分野は多彩。業態も総合メーカーから専業メーカーまで、さまざまだ。近年目立つのは異業種からの参入で、食品や化学などのメーカーが、既存事業で開発した素材や技術を化粧品に応用する取り組みが相次いでいる。生活用品はトイレタリーとも呼ばれ、シャンプー、紙おむつ、芳香剤などを手掛ける業界だ。両者に共通するのは、生活必需品であることから常に一定量の需要があること。さらに、一般消費者向け商品のため、知名度の高い企業が多いことだ。

【展望】
どちらの業界もインバウンド(訪日外国人旅行客)消費が堅調で、今後も一定の需要が見込まれている。こうした状況から、各社で進んでいるのが、越境EC※1や海外子会社の設立といった、グローバル戦略の推進だ。日本製の商品は、品質の良さから海外でも人気が高く、SNSによる情報発信や現地での広告展開で大きな売上が期待できるからだ。積極的なグローバル戦略により、海外売上比率が60%を超えている大手メーカーもある。また、課題となっている日本の少子高齢化と人口減少に対応するため、アンチエイジングといった新たな機能性商品や男性化粧品など、新市場向けの商品提供が活発化しており、今後の成長に貢献することが期待されている。

※1 インターネット通販サイトを通じて国内商品を全世界に販売すること。ECは「Electronic Commerce(電子商取引)」の略

飲料・食品

生活との関わりが深く、中期市場は拡大
将来成長を担うのは海外展開と新市場開拓

【基礎知識】
飲料業界に属するのは、清涼飲料水や酒類を製造して販売する企業だ。食品業界は、原材料メーカーと、菓子、冷凍食品、乳製品などを製造・販売する加工食品メーカーで構成される。この2業界の特徴は、新たな味や機能の提案などでマーケットを拡大してきたことだ。また、日々の生活と密着していることから、市場は安定傾向にある。

【展望】
近年の清涼飲料水を牽引しているのは、消費者の健康意識に対応した商品だ。特定保健用食品(トクホ)飲料や低カロリー飲料が好調で、この傾向は続くと考えられている。酒類では、クラフトビールなどの個性的な少量生産品が注目を集めている。食品では、高齢化に対応した健康食品をはじめ、女性の社会進出でニーズが高まった惣菜品や冷凍食品、増加する単身世帯向けの小サイズ品など、社会動向をとらえた商品が伸びている。長期的には両市場とも縮小が予想されることから、経済発展の著しいアジア地域など海外への展開が加速している。また、事業の多角化やM&Aも盛んで、医療・バイオケミカル分野へ進出する企業も増えている。

医薬品

高齢化社会を背景に、業界全体への期待が増大
新薬の開発・低価格提供に向け、各種の施策が進行中

【基礎知識】
医薬品には、処方が必要な「医療用医薬品」と、ドラッグストアなどで購入できる「OTC医薬品※1」があり、医療用医薬品が市場の9割を占めている。また、医療用医薬品には「新薬」と、特許切れの新薬をコピーした低価格の「ジェネリック医薬品」がある。この分類から、新薬を開発するのが「先発医薬品メーカー」、ジェネリック医薬品を作るのが「後発医薬品メーカー」、OTC医薬品を提供するのが「一般医薬品メーカー」と呼ばれている。新薬開発には10年以上の年月と数百億円の費用がかかるものの、成功確率は3万分の1以下。そこで、資金確保に向け、グローバルなM&Aが繰り返されている。

【展望】
高齢化が進む日本の市場規模は世界トップクラスで、海外メーカーの日本進出が相次いでいる。こうした中、日本の先発医薬品メーカーは新薬開発の可能性を高めるため、官学連携やAI・DXの導入、有望バイオベンチャーの買収を推進。新型感染症の発生などもあり、画期的な新薬登場の期待が高まっている。また、新市場の獲得に向け、新興国への進出も加速している。後発医薬品メーカーも、政府が掲げる医療費削減に寄与することから、存在感が高まっている。

※1 Over The Counter:一般医薬品(漢方薬も含む)。カウンター越しに販売されることから、こう呼ばれている

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商社

一般的に、「トレーディング」と「事業投資」を展開しているのが商社だ。トレーディングとは、仲介業者として国内外にある商材の需要と供給を結び付けること。たとえば、海外の資源会社と日本メーカーの間に入り、原料のスムーズなやり取りを実現する仲介役になることだ。もうひとつの事業投資は、投資先の企業に資金・人材・経営ノウハウといった経営資源を投入して事業を成功に導き、リターンを得るというものである。商社が扱う商材は、ラーメンからロケットまで多種多様。この幅広い商材をトータルに扱う「総合商社」と、特定の分野に特化した「専門商社」がある。

総合商社

加速する「非資源ビジネス」の強化
事業変革が進む「資源ビジネス」

【基礎知識】
総合商社という業態は海外になく、日本独特のものだ。扱う商材は、大きく「資源」と「非資源」に分類でき、いずれの商材もビジネス対象はグローバルで幅広いことから、業界各社の企業規模は大きく、業界規模も他業界と比べて群を抜いている。総合商社の特徴は、ビジネスに取り組む姿勢にある。時代の流れから事業のライフサイクルを読み取り、手掛ける事業(事業ポートフォリオ※1)を常に見直して、有望な事業に軸足を移す。この取り組みをグローバルな視点で展開することにより、成長を続けているわけだ。また、ビジネスモデル自体は各社に共通していることから、強みとなる分野を持つことで、他社との差別化を図っている。

【展望】
大きな方向性としては、非資源ビジネスの強化が加速している。その中で注目されるのは、世界各国で対策が進む「環境対策」や、高齢化を背景とした「医療・バイオ」だ。「生活・食品関連」も、グローバルでは人口が増加していることから対応が進んでいる。IoT・AI・DXといった「デジタル新技術」も、既存ビジネスの効率化や新事業の創出に貢献することから、進出する企業は多い。資源ビジネスも、モノ作りに資源は欠かせないため、ニーズは常にある。そこで、強みとしている商社は、資源価格の変動が業績に与える影響を抑え、安定して供給できる仕組み作りを積極的に進めている。

※1 手掛けている各事業やその組み合わせによる収益性、安全性、成長性などが確認できるように一覧化したもの

専門商社

海外進出、業務の価値創造、新商品の企画・開発など
蓄積した専門性の活かし方が、今後の成長の鍵に

【基礎知識】
専門商社の強みは、特化した領域で高い専門性を持ち、存在感を示していることだ。企業分類は、医薬系・食料品系・機械系・エレクトロニクス系といった手掛ける分野別のほか、大手メーカーとの関係が深い「メーカー系」、総合商社とのつながりがある「総合商社系」、特定の関係を持たない「独立系」という分け方もある。事業は、トレーディングが中心。市場は国内を中心に展開してきたが、社会構造の変化をとらえ、海外事業を手掛ける企業も増加している。

【展望】
市場自体は安定しているものの、長期的に国内市場は飽和することから、将来を見据えた対応が始まっている。まずは、海外進出だ。未開拓の国や地域で、強みを活かしたビジネスを展開する動きが活発になっている。そしてもうひとつが、トレーディングに専門性を活かした新たな価値を加え、業務範囲を広げるケースである。食品商社であれば、消費者ニーズを理解している強みを生かして、メーカーの新商品企画や開発を支援。販売チャネルの開拓までサポートする動きもある。このほか、業務の効率化と拡大、顧客ニーズへの対応力を強化するため、M&Aも進んでいる。さらに、メーカーへの投資で独自ブランドや新製品の開発に乗り出すなど、事業投資に進出する企業も登場。蓄積した専門分野の知見という強みを、どのように活かすか。そこに成長の鍵があると見られている。

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金融

"金"銭の"融"通をビジネスにしているのが、金融だ。金融の業務は、「金融機関」「貸し手」「借り手」で成り立っている。「金融機関」は、さまざまな金融商品を企業や個人などの「貸し手」に販売し、お金を預かる。預かったお金を融通してほしい企業や個人などの「借り手」に貸し出し、返済時に貸した金額に利子を上乗せして戻してもらう。金融機関は、この利子で主な収益をあげているのだ。業態の違いから、銀行、証券、保険、信販などに分類されるが、基本的な仕組みは同じ。お金の流れが止まると、企業や個人はもちろん、自治体も国も、活動がストップしてしまう。社会が健全に活動するため、お金という血液を送り込む心臓のような存在が、金融である。

銀行

日本の経済活動を支える巨大なビジネス
先進技術や異業種との連携で新たな収益構造を追求

【基礎知識】
銀行の主な業務は、お金を預かる「預金業務」、融資を検討して実施する「貸付業務」、振込送金などを行う「為替業務」の3つで、それぞれ個人や中小企業向けの「リテール」事業と、大企業向けの「ホールセール」事業に分類される。市場規模は、日本の産業の中でトップクラス。その中心に位置するのが「都市銀行」で、上位3行は「メガバンク」と呼ばれている。このほか、特定地域でビジネスを行う「地方銀行」、銀行業務に加えて顧客の資産運用などの信託業務も行う「信託銀行」、特定の地域や業種を対象に相互扶助の理念に基づいて活動する「信用金庫・信用組合」、インターネット上でのみサービスを提供する「ネット銀行」がある。

【展望】
銀行の課題は、マイナス金利政策が続く中、どのようにして収益を確保するかだ。そこで現在、各行で活発に進んでいるのが、先進テクノロジーの導入で業務の合理化・効率化を図り、収益をあげようという動きである。受付業務をロボットに移行する動きが始まっているほか、資産運用の確度向上や新サービス開発ではAIやビッグデータ解析、フィンテック※1の利用が本格化しており、事務効率を高めるためにRPA※2の導入も進んでいる。キャッシュレス化への対応も、注目ポイントのひとつだ。このほか、地方銀行では近隣銀行との再編が加速している。また、IT系の大手やベンチャー企業が、仮想通貨※3などを通じて金融サービスに参入したことから、異業種との連携や対応も、今後の重要なポイントになっている。これまで提供してきたサービスと先進テクノロジーの融合で、どのような価値を創造し、顧客の期待に応えるか。これが、今後も成長するための絶対条件になっている。

※1 ファイナンス(Finance)とテクノロジー(Technology)を合わせた造語。ICT(情報通信技術)を駆使して革新的な金融商品やサービスを生み出す技術や取り組みのこと
※2 Robotic Process Automation:これまで人間が行ってきた業務をAI や機械学習などを導入した自動化工程に移行(ロボット化)し、業務の効率化を図ること
※3 インターネット上で流通しているデジタル通貨

証券

好調な市場を反映し、新規顧客の獲得に注力
AI活用や異業種連携など、各社が独自の施策を推進

【基礎知識】
証券は、株式や債券(国債や社債など)といった有価証券の売買を手掛ける企業で構成されている業界だ。主な業務は、有価証券の売買を仲介して手数料を得る「ブローカー業務」、自社資産を運用して収益をあげる「ディーラー業務」、有価証券の発行を引き受けて販売する「アンダーライター業務」、保有する有価証券を売る「セリング業務」の4つ。業態は、店舗を設置して顧客と取引する「店舗型証券会社」と、インターネットでサービスを行う「ネット証券会社」がある。店舗型証券の強みは、顧客と対面して細かなサポートができるところ。ネット証券は、店舗の維持コストが不要なことから、手数料を安く設定できるところが強みになっている。

【展望】
短期的には新型感染症の影響などで投資の停滞はあるものの、中長期では好調に推移すると見られている。そこで加熱しているのが、NISA※1やiDeCo※2で投資への関心を新たに抱いた個人顧客の獲得競争だ。ネット証券が打ち出したのは、「手数料無料化」という施策。さらに、カード会社などは、「ポイント利用」という新たなサービススタイルで証券業界への新規参入を図っている。こうした状況を踏まえ、店舗型証券を含む各社が、蓄積した強みを最大限に活用した魅力的なサービスの創出を推進。異業種との連携も盛んになっている。その中で大きなトレンドとして注目されているのが、AIの活用だ。金融商品の開発や販売のほか、企業の業績分析、投資判断ツールなど、さまざまなシーンでの利用が始まっている。市場が上昇傾向にある中、顧客が満足するサービスの実現に向け、新たな発想に基づく多種多様な取り組みが、各社で進められている。

※1 毎年120万円の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる、個人投資家のための税制優遇制度
※2 多くの国民が、より豊かな老後の生活を送るための資産形成方法のひとつとして実施されている私的年金制度。個人型確定拠出年金

保険

「将来の不安から守ってほしい」という想いの高まりや
グローバル化、新技術応用など、多くの成長要因に注目

【基礎知識】
保険は、人々に「もしも」が起こったときの支援を行う業界で、「生命保険会社」と「損害保険会社」がある。生命保険会社は、死亡保険や医療保険、学資保険など「ヒト保険」を取り扱う会社だ。生保レディと呼ばれる女性外交員の活躍が業界を牽引してきたが、最近は損害保険会社の子会社や外資系、ネット系の企業が伸びている。損害保険会社が取り扱っているのは、自動車保険、地震保険、傷害保険などの「モノ保険」だ。代理店を通して商品を販売する店舗型、ネットや電話で商品を販売する通販型がある。保険会社は、商品販売で集めた保険料を、金融市場で運用することで収益を得ている。

【展望】
生命保険業界にとって、人口減少は課題であるものの、長寿化を反映して医療・年金・介護といった保険商品は好調に推移している。損害保険業界も、若者の自動車離れや高齢者ドライバーの交通事故件数増という懸念材料がある一方、地震や台風などの自然災害に対する危機感の高まりから契約件数は増えている。また、新興国では生命保険も損害保険も普及率が低いことから、海外ニーズに対応した商品開発をはじめ、海外法人との業務提携やM&Aなど、グローバル市場を見据えた成長への取り組みは着実に進んでいる。このほか、顧客から収集した膨大な行動データのビッグデータ解析によって新商品や新サービスを開発することにより、成長を加速させることも期待されている。

信販・クレジットカード・その他金融

貸金業務に特化した「ノンバンク」市場は
キャッシュレス決済やリースのグローバル化で拡大中

【基礎知識】
信販・クレジットカードをはじめ、リースや消費者金融などは、「ノンバンク」と呼ばれる金融機関だ。特徴は貸金業務に特化していることで、メガバンク傘下の企業も多い。信販・クレジットカード会社は、消費者が商品やサービスを購入する代金を立て替え、その手数料で利益を得ている。リースは、主に企業が設備を調達する際、購入を代行して長期間貸し出す事業者だ。利用企業にとっては「多額の資金を準備せずに設備投資できる」メリットがあり、成長をサポートするサービスとして利用率は上昇している。消費者金融は、個人の生活資金や自営業者の事業資金など、小口融資を無担保で行う企業だ。ノンバンクは銀行より高金利の場合が多いものの、融資スピードが早く、利用しやすいことが強み。海外からは、ATM対応などの機械化推進が貸金業の先進ビジネスモデルとして評価されている。

【展望】
信販・クレジットカードは、スーパーやコンビニなどでの少額決済やネット通販利用などからビジネスチャンスは拡大しており、「金融機能を持った総合サービス会社」としての成長が注目されている。その一方で、競争の激化から異業種連携にも積極的で、消費者に「使われるサービス」になるための価値創造に努めている。こうした中で勢いを増しているのが、キャッシュレス決済事業だ。中でも電子マネー(接触・非接触型)とQRコード決済は大型キャンペーンなどでユーザーを獲得し、安定成長の基盤構築に取り組んでいる。リースは、民間設備投資の利用率が欧米に比べて低いことから、国内成長の余地は高いと考えられている。また、新興国での環境整備をはじめ、太陽光発電や航空機のリース需要が各国で拡大していることから、海外企業との提携やM&Aなど、グローバル戦略を推進する動きも目立ってきた。消費者金融は、イメージを刷新するマーケティング戦略を推進。利便性はそのままに、健全性をアピールして利用者を拡大する新たなビジネスモデル構築を進めている。

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流通

流通は、生産者が作り出した商品を、消費者に届ける役割を担っている業界だ。中核を構成するのが「小売業」で、さまざまな業態があるものの、展開しているビジネスは、商社などの卸売業から商品を仕入れ、消費者に販売することである。業態は大きく、リアル店舗での販売が主体の一般的な小売業と、通販などの店舗を持たない無店舗小売業の2つに分けられる。チャネルが多様化して競争が激化したことにより、今後を見据えた取り組みとしては、単なる商品の提供だけではなく、そこで購入したくなる仕掛けやサービス、店舗作りなど、消費者の購入意欲を高める価値創造が活発化している。

通販

今後も成長するネット通販へ、さまざまな事業者が参入
一般消費者向けはもちろん、企業向けも成長中

【基礎知識】
通販(通信販売)会社は無店舗小売業のひとつで、メディアで商品を紹介して消費者から注文を受け、商品を販売する事業を手掛けている。市場をリードするのは、EC専業者が運営するWebサイトで行われているネット通販だ。インターネット、中でもスマートフォンの普及でユーザーが拡大したことから、EC専業者が自社サイトへの出店誘致を積極的に行い、多くの企業が出店。取扱品目の拡充と顧客サービスの充実により、市場は年々拡大している。このほか、B to Bやシニア層に定着しているカタログ通販のほか、テレビ通販、ラジオ通販などを各通販会社が展開している。

【展望】
ネット通販市場は、今後も大きく伸びると予測されている。その理由は、取扱品目や顧客サービスの拡充はもちろん、スマートスピーカー※1の普及など、簡単に発注できる環境がますます暮らしに浸透すると考えられるからだ。こうした成長予測から、新たなEC専業者の誕生はもちろん、総合通販事業者やオムニチャネル※2を推進する小売業の参入も増えている。また、B to Bの成長率はB to Cを上回っていることから、今後の伸びに大きな注目が集まっている。テレビ通販は、引き続きテレビ通販専門企業が注力。健康食品や健康器具、サプリメント、家電製品など、取扱品目の拡充に努めている。

※1 音声操作に対応したAI(Artificial Intelligence:人工知能)アシスタント機能を持つ対話型スピーカー。内蔵マイクで音声を認識し、情報の検索や連携家電の操作などを行う。AIスピーカーと呼ばれることもある
※2 Omni-Channel:店舗、イベント、インターネット、モバイルなど、チャネルを問わずに、あらゆる場所で顧客と接点を持つ戦略。小売業におけるマルチチャネルの進化形

専門店

激化する競争を乗り越えるため
各社で進む、従来にない差別化の創造

【基礎知識】
専門店は、特定ジャンルに特化した商品販売を行う企業で、さまざまな業種がある。「アパレル」は、生活必需品の衣料品を扱う事業者だ。低価格を強みとするファストファッション※1が伸びる一方で、高級品志向に応える企業も安定した業績をあげている。「ドラッグストア」が扱っているのは、医薬品や化粧品、日用品など。「家電量販店」は、充実した品揃えの生活家電を低価格で販売して成長してきた。「ホームセンター」は、郊外店を中心にDIY※2用品をはじめ、“ないものはない”多彩な品揃えが特徴。このほか、カー用品、眼鏡、家具、雑貨、おもちゃなどの専門店もある。

【展望】
アパレルは、今後も低価格志向が続くと予測されている。そこで、コスト低減のために生産・梱包・配送などの効率化や、無店舗形態に進出する企業が増えている。また、サブスクリプションサービス※3による顧客の囲い込みのほか、AIで消費者ニーズを予測して確実に売れる仕組み作りに乗り出す企業も登場。人口の増加で需要が高まる海外市場へ、進出する企業も目立ってきた。ドラッグストアは、規模の拡大が成長につながるため、大手同士のM&Aが加速。長期的には、高齢化社会の動向をとらえ、地域包括ケアシステム※4対応なども進むと考えられている。家電量販店は、競争の激化からスケールメリットと多角化をめざしたM&Aが活発化。非家電領域の品揃え強化や、住宅・リフォーム事業への進出など、新たな成長路線の構築にチャレンジしている。ホームセンターは、多彩な品揃えで競合するネット通販との差別化を図るため、対面販売ならではのサービスなど、新たな魅力となるビジネスモデルの構築が急務となっている。このほか、いずれの専門店でも推進されているのが、SNSで発信した情報で消費者をリアル店舗へ誘導して購買に結び付ける「O to O※5」戦略だ。

※1 流行のデザインを採り入れながら価格を抑えた衣料品を、短期サイクルで大量に生産・販売するアパレルブランド企業
※2 Do It Yourself:専門業者でない人が、何かを自分で作ったり修繕したりすること
※3 定額料金の支払で一定期間のサービスが受けられるシステムのこと
※4 高齢者が住み慣れた地域で自分らしい人生を最後まで送れる社会をめざし、厚生労働省が2025年を目途に整備を進めている体制
※5 Online to Offline:オンラインとオフラインを連携させて購買活動を促進させるマーケティング施策

百貨店

良質の接客サービスなど、百貨店ならではの蓄積を
成長をさらに後押しするネットスーパーと海外展開

【基礎知識】
食品を中心に、日々消費される膨大な数の商品を取り揃えているのがスーパーだ。人々の暮らしを支えるライフラインとしての存在感も高まっている。スーパーの中でも、衣料品や家電など多種多様な商品を揃える総合スーパーはGMS※1と呼ばれ、1店で何でも揃う利便性と大量仕入れによる低価格を実現。大手GMSはM&Aで規模を拡大し、売上は圧倒的な規模にある。コンビニエンスストアは、年中無休で長時間営業する小売店のこと。小規模店舗内に、食品から日用雑貨、ATMのほか、宅配便の発送・受取や公的証明書の発行機能も備えるなど、生活インフラの役割も担っている。

【展望】
インバウンド(訪日外国人旅行客)需要が一段落したことに加え、これまでの成長を支えてきた主要顧客が高齢化し、購入頻度の減少と意欲減退に直面していることから、新たな成長戦略が急務となっている。そこで目立ってきたのが、商品カテゴリーを絞る「専門化」、ショッピングセンターと融合する「ハイブリッド化」、蓄積した強みを応用して専門店を開発する「専門店化」、ネットやカタログ通販も手掛ける「オムニチャネル化」という「脱・百貨店」に向けた4つの方向性だ。これを国内外で推進し、新しいブランドやサービスを確立することで、若年層の獲得といった新市場の開拓をめざしている。このほか、不採算店の整理や基幹店のリニューアル・増床、M&Aなどで、経営の効率化と売上の拡大を見据えた取り組みも進んでいる。

スーパー・コンビニエンスストア

両市場とも引き続き、好調に推移
コンビニは新商品開発と海外展開に注目

【基礎知識】
食品を中心に、常時1万点以上の商品を取り揃えているスーパー。人々の生活になくてはならないライフラインとしての存在感も高まっている。スーパーの中でも、衣料品や家電まで揃える総合スーパーはGMS※1と呼ばれ、店内で何でも揃う利便性と大量仕入れによる低価格を実現している。大手GMSはM&Aによって規模を拡大し、圧倒的な売上を上げている。コンビニエンスストアは、年中無休で長時間営業する小売店のこと。小規模店舗に食品など各種の商品を取り揃えているほか、公的証明書の発行機能も備え、地域のインフラとしての役割も果たしている。業界は現在、上位3社を中心に熾烈な競争が展開されている。

【展望】
スーパーで業績が好調なのは、食品スーパーと生鮮スーパーだ。地域に密着したサービスや、プライベートブランド(PB)※2などの良質で低価格な商品の提供で、今後も売上増が見込まれている。さらに、インターネットで注文を受け、自宅に配送するネットスーパー市場が、着実に規模を広げている。ネットスーパーは、共働きや高齢者世帯の増加で今後の成長分野と見られており、各社とも注力している。地方の中堅スーパーでは、全国規模の資本提携やM&Aでコスト低減と事業拡大を図り、成長力を獲得する動きが活発になっている。コンビニ市場は、年々好調に伸びている。要因は、PBなど新規商品の増加、単身・共働き世帯のニーズに応える日配食品※3の拡充、多様な決済方法に対応したことなどがあげられる。その一方で、24時間営業の見直しや店舗数の飽和といった懸念材料もある。そこで、他店との差別化を図って来店客数を増加するために、コインランドリーやフィットネスを併設した店舗が増加中。無人レジの導入は、若年層の取り込みと業務コストの低減に貢献している。さらに、大規模な海外戦略も各社が推進している。

※1 General Merchandise Store:ゼネラルマーチャンダイズストア
※2 商品を販売する業者独自の企画性商品。開発から生産・販売まで自社で行うため、コスト削減が可能。他社との差別化も図れる
※3 毎日店舗に配送される食品のこと。弁当や惣菜など

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情報・通信

情報・通信は、「情報処理」「通信」「インターネットサービス」に分類される。情報処理は、ソフトウェアの開発や情報システムの構築・運用、データ解析など、情報の入手から加工、活用に関わる業種だ。通信は、情報を効率よく正確に伝送するために通信基盤を整備し、固定通信、移動体通信、ケーブルテレビなどの通信サービスを実現する業種のこと。インターネットサービスは、インターネット通信を利用して、ユーザーが求める情報コンテンツを、求める形で、求められるデバイスに、最適なスタイルで提供する業種である。情報・通信業界に属する企業は、IT系・ICT系企業と呼ばれることが多い。

情報処理

新しい技術や概念の登場で、市場は常に成長
ますます向上する人材への期待

【基礎知識】
情報処理は、顧客企業の課題を解決するシステムを企画・開発・運用する企業で、SIer※1と呼ばれる。SIerの中には企画・開発・運用だけでなく、コンサルティングを行っている企業もある。SIerは大きく3つに分類され、コンピュータメーカーを親会社に持つ「メーカー系」、システムを使用する企業を親会社に持つ「ユーザー系」、親会社などの系列がない「独立系」がある。このほか、特定分野に特化したソリューションを提供する企業もある。情報処理の特徴は、AI、RPA、クラウドサービス※2、仮想通貨・ブロックチェーン※3、DXなど、新しい技術や概念が登場するたびに従来は難しかった課題解決が可能になり、新市場が創出されることだ。そのため、成長は今後も続くと見られており、巨大な新市場が誕生する可能性も大いにある。

【展望】
企業が直面している課題は、さまざまな事柄が複雑に絡み合っており、解決の難度は高度化している。そのため、SIerや各ソリューション企業に、複数の技術を連携させて課題を解決することへの期待が年々高まっている。また、働き方改革を推進するための環境整備や、自動車・産業用機械の自動運転、製造工程を改革する第四次産業革命など、世の中にはITの応用で解決すべき課題が目白押しだ。さらに、従来はITとの縁が薄かった農業などの産業でもDXが加速するなど、世の中の働きやすさ、暮らしやすさを実現するため、業界への期待は高まっている。こうした状況から、システムの運用業務を請け負うアウトソーシング※4を含め、市場は引き続き成長すると予想されている。その一方で、解決に取り組む人材が不足するという懸念は大きく、優秀な人材の確保が今後の成長を左右する重要なポイントになっている。

※1 SI(System Integration)+er:システムインテグレーション(SI)を行う企業を表現するため、「~する人」という接尾辞「er」を付けてできた造語。システムインテグレータとも呼ばれる
※2 ネットワーク上でデータの処理・保存・管理などの機能を提供するサービス
※3 ネットワークに接続した複数のコンピュータでデータを分散共有することにより、耐改ざん性と透明性を実現する技術。仮想通貨の信頼性を支えるキーテクノロジーになっている
※4 Outsourcing:外部委託。従来は顧客企業内で行っていた業務を、外部組織の専門事業者が請け負い、サービスとして提供すること

通信

市場を活性化する最新規格が登場
新たな成長を導く新ビジネスモデルに注目

【基礎知識】
通信事業者はキャリアとも呼ばれ、使用回線の種類によって、大きく3つに分類される。(1)光回線などの大容量データが高速でやり取りできる有線の「固定回線」を提供しているキャリア。このグループの中核は、以前から固定電話回線を提供してきた企業と電力会社系列の通信事業者、そしてケーブルテレビサービスを提供している企業だ。(2)スマートフォンやタブレットなど、移動体通信向けに無線の「モバイル回線」を提供している携帯キャリア。運用設備・回線を自社で持つMNO※1と、格安SIM※2業者と呼ばれるMNOから運用回線を借りてサービスを提供するMVNO※3がある。(3)B to B用途を中心に、「海底ケーブル・衛星通信」を提供している通信事業者。海外との通信・通話やデータのやり取りを支えているのは、このキャリアである。通信業界は成熟期にあるものの、国民生活に欠かせない重要なインフラである。また、技術の進化によって常に変革の波が訪れ、新たなサービス市場が誕生することから、今後も引き続き成長すると考えられている。

【展望】
最も注目されているのは、モバイル回線の最新通信規格「5G」だ。従来の100倍超という高速性のほか、「多数同時接続」と「超低遅延」も実現。モバイル通信の快適さはもちろん、VR/AR/MRの日常利用、スマートシティ※4の普及、IoTの進化によるビジネスの効率化や新たな産業の創出、自動運転の支援、遠隔医療の進化など、さまざまな通信シーンの新時代到来が想定されている。こうした5Gのグローバルな新時代を日本企業がリードすることをめざし、日本政府の支援政策も進められていることから、通信各社がどのような取り組みを推進し、魅力あるサービスや新しい社会の実現に貢献して業績を伸ばしていくのか、熱い視線が注がれている。また、格安SIMは、政府の携帯電話料金引き下げ意向を受けて拡大を続けてきたものの、サービス提供企業が1000社を超えたことで、業界再編が始まっている。MNOの価格戦略も強化されてきたことから、各社がサービスの特徴を明確に打ち出し、第2の成長をめざした競争が本格化している。

※1 Mobile Network Operator:自社設備を持つ大手携帯キャリアのこと
※2 Subscriber Identity Module card:モバイル端末の使用者を特定するID番号が記録されたICカード
※3 Mobile Virtual Network Operator:MNOの設備を借り受けて、自社ブランドの移動体通信サービスを提供する事業者
※4 情報通信技術やAIなどの先端技術を利用して、エネルギーや交通、行政サービスなどのインフラを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら人々の生活の質を高め、便利な暮らしの実現を目的につくられた都市のこと

インターネットサービス

スマートフォンとタブレットの普及が
市場のさらなる拡大を誘引

【基礎知識】
業界は、「ポータルサイト事業」「モバイルコンテンツ事業」「SNS事業」「動画配信事業」「ネット広告事業」の5つで構成されている。ポータルサイト事業が手掛けるのは、ニュースサイトや通販サイトなどの運営だ。利用者が多いほど掲載広告や通販の売上が増えることから、新規ユーザーの獲得・維持に各社注力している。モバイルコンテンツ事業は、モバイル端末向けに各種コンテンツを配信する事業のこと。スマートフォンやタブレットの普及で、市場は急速に発展している。SNS事業は、ネットワーク上で人々のつながりをサポートするコミュニティ型の会員制サービスだ。当初は日本独自のスタイルで発展したが、2000年代後半からは世界標準のサービスが日本でも主流になった。動画配信事業は、映画やテレビ番組などの動画コンテンツを、利用者が観たいとき視聴できるようにしたサービスだ。回線の高速化やコンテンツの充実、サブスクリプションサービスの提供などで、一気に市民権を獲得した。ネット広告事業は、Webブラウザやアプリと連動した宣伝活動を担う事業で、市場はスマートフォン向けが牽引している。

【展望】
ポータルサイト事業で目立つのは、大手によるM&Aを含む事業の多様化・多角化だ。提供コンテンツや販売商品の多様化はもとより、金融業や旅行業など、さまざまな事業領域へも積極進出。ひとつのサイトでさまざまなニーズが満たせることからユーザー獲得に成功し、業績も好調なことから、多様化は今後も進むと考えられている。一方、中小サイトは専門領域に特化し、差別化の創出によるユーザー獲得に注力している。モバイルコンテンツ事業は、中心ユーザーが若年層のためにトレンド変化が激しく、成長の主力コンテンツは、ゲームから実用情報への移行が進んでいる。今後も幅広いマーケティング活動で常にユーザーのトレンドを見極め、話題性のあるサービス投入が成長の条件になっている。SNSは、インターネットユーザの6割以上が利用していると想定され、その割合は年々増加している。サービス対象はプライベートからビジネスまで幅広く、扱う情報はテキストから画像、動画、電話へと次第に拡大してきた。まだまだ発展段階にあることから、扱うサービスにより、事業は一気に拡大する可能性があると考えられている。動画配信事業は、二桁成長を続け、2024年には4,300億円を超えると予想されている。この成長の鍵を握っているのは、コンテンツの充実度だ。話題になった映画やテレビ番組はもちろん、最近は動画配信会社の企画作品もユーザー獲得の力になることから、企画力の強化に各社とも取り組んでいる。ネット広告事業は、2020年に2兆円を突破し、2023年には2.8兆円までの拡大が見込まれている。ネット利用者の検索ワードと連動した広告表示と動画広告の出稿が事業をリードしており、今後はアプリ広告、屋外デジタル広告の拡大が見込まれている。

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運輸・エネルギー

運輸は、輸送機器を使って人やモノを運ぶビジネスだ。トラックや列車など自ら輸送手段を持つ事業者のほか、フォワーダー※1や3PL※2など、独自の戦略で輸送サービスを提供している事業者もある。長期的には国内需要が縮小するため、海外対応が本格化している。エネルギーは、社会のインフラを支える重要な事業だ。石油や液化天然ガス(LNG)など、多様な原料からエネルギーを生産・供給する役割を担っている。業界では、探鉱、開発、生産といった資源開発だけでなく、新燃料・再生可能エネルギー関連への進出など、事業の多角化が進行中だ。電力・ガス業界は小売の自由化によって競争が激化しており、新規参入組を含む各社が、顧客の囲い込みや新規獲得に向けた施策を精力的に実施している。

※1 国際物流のプロフェッショナル。自らは輸送手段を持たず、荷主と直接契約して、その内容に応じて最適な輸送手段を選択して国際貨物輸送を行う事業者
※2 Third(3rd)Party Logistics:輸送サービスだけでなく、物流システム全体を荷主に提案し、全体業務を受託する事業者

陸運

通販の普及により、市場は引き続き成長
業務の効率化や海外戦略も積極的に推進

【基礎知識】
陸運は「陸上運送」の略で、基本的にはトラックで貨物輸送を行っている。業界を構成するのは、「大口」の法人需要に対応する「企業物流事業者」と、「小口」の個人需要に応える「宅配事業者」だ。大手は両者の需要を取り込み、大きな存在感を示している。業界が抱える最大の課題は、ドライバー不足だ。そこで、人材の積極採用が行われているほか、省力・省人化の実現に向けた高速道路での自動運転走行やドローン配送といった先進技術の導入も検討されている。こうしたコストが運賃値上げに反映されることから、短期的には需要を押し下げるものの、長期的には安定した輸送能力を確保するため、上昇に向かうと予測されている。こうした成長の一方で注目されているのが、モーダルシフト※1の影響である。

【展望】
通販の普及で、小口の輸送量は増加の一途だ。今後も、上昇を続けると見込まれている。そのため、M&Aによる輸送能力強化をはじめ、大規模物流拠点の新設や自動化ロボットの導入で荷受け業務を効率化するといった動きが進んでいる。その一方で、再配達の増加など、配送業務の効率低下・負担増が深刻さを増していることから、宅配ボックスの設置などで改善が進むと考えられている。また、将来的には国内通販市場も成熟することから、海外展開も加速している。特に、成長が著しいアジア市場に向けて、宅配ネットワークの整備や3PL対応などが進んでいる。大口輸送でも、荷物の輸送・保管をトータルに効率化するため、各社が3PL対応を進めている。

※1 環境負荷を低減するため、トラックによる幹線貨物輸送を、大量輸送が可能な海運や鉄道に転換すること

海運

日本の貿易を支えるグローバルなビジネス
強みを持つ事業への集中で、さらなる成長へ

【基礎知識】
海運は、船舶を使って人やモノを海上輸送する業界だ。長距離の大量輸送や重量物輸送を低コストで行えることが特徴で、日本の貿易のほとんどを担っている。船の種類としては、工業製品や日用品などを入れたコンテナを運ぶ「コンテナ船※1」、穀物や鉱石などの貨物を梱包せずに運べる「バラ積み船」、原油などの液体を運ぶ「タンカー」、自動車を運ぶ「自動車船」などがある。このほか、一般向けにフェリーなどの旅客船を運航している海運会社もある。

【展望】
業界がグローバルで取り組んでいる船舶燃料の環境対策も、日本は産官学の連携で対応が進んでおり、世界中の注目を集めている。こうした中、世界経済が回復基調にあり、東アジアは経済成長が続いていることから、輸送量は増加傾向にある。中国の海運が米中貿易戦争の影響を受けていることも、日本には追い風になっている。需給バランスも改善が進み、大手3社はコンテナ船事業の統合で、効率的な運航の実現と燃料コストの削減により、業績の向上をめざしている。海運ビジネスは1件が巨額であることから、強みのある輸送分野に集中し、日本経済を支えるビジネスとしての成長が、引き続き期待されている。

※1 定期的なスケジュールで就航することから「定期船」と呼ばれることもある。また、コンテナ船以外は貨物に合わせたスケジュールで随時就航することから「不定期船」とも呼ばれる

航空

今後20年で約2倍という成長予測
期待が高まる東京上空の飛行ルート解禁効果

【基礎知識】
航空業界には、人を運ぶ「旅客分野」と、モノを運ぶ「貨物分野」がある。旅客分野を構成するのは、FSA※1とLCC※2だ。FSAは、路線網が豊富で質の高いサービスを行う既存航空会社のこと。LCC最大の特徴は、低料金だ。グローバルでは多くの国でLCCの国内シェアが5割を超えていることから、日本政府はLCCのシェア拡大策を推進しており、LCCの追い風になっている。貨物分野は、国内貨物と国際貨物があり、輸送対象は、高い輸送コストを価格に転嫁できる半導体、工業材料、医薬品などの高付加価値商品だ。

【展望】
旅客分野は、アジア各国の経済発展とともに、日本の積極的な魅力アピールが功を奏し、需要は今後20年で約2倍になると予測されている。この需要拡大を着実に取り込むため、FSAは成長が見込まれる国の航空会社との提携やコードシェア便※3の運航を実現し、利用客の獲得を進めている。LCCも運航路線の特化や他社にないサービスで潜在需要を喚起し、FSAとは異なる層の利用者獲得に取り組んでいる。貨物分野で日本は、アジアと米国間の輸送経由地という重要な役割を担っている。米中貿易戦争の影響で電子部品などの輸出が減少傾向にあるものの、トータルでは成長が続くと見られている。また、東京上空の飛行ルート解禁で、羽田空港の機能が強化され、年間数千億円の経済波及効果と数万人の雇用創出が期待されている。

※1 Full Service Airline:FSC(Full Service Carrier)やメガキャリア、レガシーキャリアと呼ばれることもある
※2 Low Cost Carrier:格安航空会社と呼ばれている
※3 ひとつの飛行機を複数の航空会社で運航する便のこと。共同運航便とも呼ばれる

鉄道

日々の暮らしになくてはならない産業
鉄道を核とする多角化で地域の発展に貢献

【基礎知識】
鉄道は、日本のインフラを支える重要な業界だ。大きくは、JRグループ・私鉄・公営鉄道に分けられる。通勤や通学などの移動になくてはならないものであり、地域貢献度の高さはトップレベルにある。事業は、鉄道を利用した旅客・貨物の輸送事業を中心に、沿線の利便性を高めるバスやタクシー事業も展開している。業績は、利用者数と比例する。そこで、各社とも将来的な人口減少を考慮し、沿線の価値を創造して新たな収益を確保する多角化に注力している。主な事業は、沿線の住宅開発に代表される不動産事業のほか、百貨店・商業施設などの流通事業、ホテル・レジャー事業、クレジットカード事業などだ。

【展望】
過疎化が進む地方では、いかに事業を継続し、地域インフラの役割を果たすかが重要なテーマになっている。また、安全・安心運行のため、ホームドア設置やバリアフリー化に伴うコスト増は、鉄道全社が抱える課題だ。そこで、より効率的な運行の追求とともに進んでいるのが、新規路線や新駅開業で新規利用者を創出し、収益増につなげようという動きである。その一環として、他社との相互乗り入れによる直通運転路線の拡大も、活発化している。このほか、旅行需要の獲得・拡大をめざした豪華観光列車の導入も盛んで、多角化も引き続き推進されると予想されている。そして今後、ビッグビジネスになると注目されているのが、高速鉄道システムの輸出だ。海外の高速鉄道需要が増加していることから、2027年に運行が始まるリニア中央新幹線※1など、乗り心地のよい車両技術や安全で定時に運行できる鉄道システムの海外展開が検討されている。鉄道業界は、このように従来モデルにはこだわらず、新たな視点からのビジネスモデル確立が必要になっている。

※1 日本独自の超電導リニア技術によって実現する新たな新幹線。最高速度は時速505キロ。トータルな走行距離は約438キロで、2027年に品川-名古屋、2037年に名古屋-新大阪間が開業予定

電力

勢いが増す新電力。新たな成長ポイントは
クリーンな電力の安定供給と価格のバランス

【基礎知識】
電力は従来、各地域に根ざした10社がそれぞれの地域事業を独占し、競争のない安定した環境下で、電力の安定供給とクリーンエネルギーの創生に携わってきた。それが2016年に電気の小売全面自由化がスタートし、ガス、石油、通信、商社など、多くの異業種企業が“新電力”として新規参入した。現在、電気事業は「発電事業」「送配電事業」「小売電気事業」に分類され、旧来の電力会社はこの3事業すべてを行い、新電力の多くは「小売電気事業」のみに従事している。

【展望】
全販売電力量に占める新電力のシェアは、2019年に15%を超えた。2020年には「発電事業」と「送配電事業」が旧来の電力会社から分離されて中立なものになったことをきっかけに、ポイント戦略などが強化され、新電力の勢力は、さらに拡大すると見られている。競争がより激化することから、旧来の電力会社と新電力や、新電力同士など、さまざまなパターンのM&Aが進むと予想されている。将来的には「電気・ガス・石油を融合した総合エネルギー企業」をめざしている企業が多く、クリーンな電力の安定供給と価格とのバランスを、どのように実現するのか、各社の動きが注目されている。

ガス

工業需要とガス・電気のセット販売が業績を牽引
エネルギー自由化が本格化したときの戦略に注目

【基礎知識】
日常生活を支えるインフラのひとつであるガスを供給・販売するのが、ガス業界だ。導管を通じて供給する「都市ガス」業者と、ガスボンベを設置して供給する「プロパンガス(LPガス)」業者がある。業界の特徴は、気候や人口の変化などと業績の結び付きが強いことだ。従来は電力と同様、担当地域が決まっており、競争のない安定した業界だったが、2017年に自由化された。多くの異業種企業から新規参入の声は上がっているが、電気ほど進んではいない。

【展望】
東日本大震災以降、電気を安定供給するために火力発電が強化され、燃料のガス消費量は伸びている。その他の工業需要も、増加傾向にある。家庭用も、「エネファーム」「エコウィル」といった省エネ型製品が好調であり、“新電力”ビジネスも順調で、ガスと電気のセット販売が業績を下支えする力になっている。さらに、バイオマス発電や地熱発電といった新エネルギーへの取り組みも進んでいる。ただ、ガス全面自由化の動きは、これからが本番だ。電力会社がガス事業を手掛けた場合や、総合エネルギー会社が誕生したとき、どのような戦略を推進するのか、注目が集まっている。

石油

今後の成長を見据えた業界再編を実施
総合エネルギー企業としてグローバルへ

【基礎知識】
業界は大きく、石油製品の精製・販売を行う「石油元売り系」と、原油・天然ガスの開発生産を行う「石油開発系」に分けられる。資源のない日本にとって、石油業界はとても重要な役割を果たしてきた。原油を海外から調達し、社会活動になくてはならないガソリン、灯油、軽油、重油などの石油製品を提供してきたからだ。こうした状況から、市場規模は巨大さを誇ってきた。ところが、環境対策から火力発電の燃料が天然ガスや石炭にシフトしたことや、ハイブリッド車などのエコカーが普及していることで、需要は下落傾向にある。そこで、経営の効率化と競争力を強化する新展開をめざして、経営統合などの活発な業界再編が実施された。

【展望】
成長戦略として、大きく3つの動きが進められている。まずは、ガソリンなどの燃料油の販売以外に、潤滑油や機能材といった石油製品の開発・販売を強化する動きだ。次に、燃料油需要が今後も伸長するアジア市場を中心としたグローバル展開も加速している。そして3つ目が、風力、太陽光、地熱、バイオマスといったCO2を排出しない新エネルギーへの対応だ。電気とガスも視野に入れた総合エネルギー企業として、幅広いエネルギー関連製品とサービスを提供するグローバル企業への転換など、さまざまな取り組みが各社で進められている。

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建設・不動産

建設業とは、ダムや道路、土木、ビル、工場、住宅などの建設工事を請け負う事業である。業界を構成するのは、あらゆる建設工事をトータルに請け負う「ゼネコン」や、ゼネコンの下で一部の工事を請け負う「サブコン」のほか、住宅を作る「住宅メーカー」、工場などを作る「プラントエンジニアリングメーカー」、道路や電気通信設備といった特定分野に特化した「専門事業者」などだ。不動産業は、建設業が作った建物や土地などの不動産関連ビジネスを手掛ける事業者を指す。業界は主に、ビルやマンションなどを企画して開発する「不動産開発企業」、不動産の販売や賃貸に関わる「不動産流通企業」、不動産の管理を行う「不動産管理企業」などで構成されている。

住宅

快適さや環境対応などを追求した
魅力ある家作りで中小メーカーが大躍進の可能性も

【基礎知識】
住宅は、主に戸建住宅の設計・施工・販売に取り組む業界だ。顧客の注文で住宅を設計・施工する「注文住宅事業」と、土地に建物を建てて売る「分譲住宅事業」がある。業界の特徴は、大手メーカーによる寡占ではなく、中小メーカーや地元に根ざした工務店が全体の7~8割を占めていること。そのため、多くの消費者に受け入れられる家作りで、シェアを大きく伸ばせる可能性がある。

【展望】
国内は少子高齢化を背景に、新築着工戸数が急拡大することはないものの、付加価値化という市場を牽引する多様な需要が顕在化している。高齢化に対応したバリアフリー化も、そのひとつだ。また、IoTやAIを活用した自動化で、家事の負担を軽減する住宅も増えると予想されている。さらに、「スマートハウス」も注目だ。これは、太陽光発電や蓄電池、住宅機器などをITで最適制御し、環境へのやさしさと快適さ・利便性を高めた住宅のこと。ZEH※1やHEMS※2を採用した住宅も、増加が見込まれている。一部のメーカーは視野を海外に向け、欧米や東南アジアに優良な住宅を供給し、新たな市場を獲得しようという活動を開始している。このほか、リフォームやリノベーションといった既存住宅の改修・改造に関連した市場も拡大中。ゼネコンのM&Aやオフィスビル建設など、非住宅分野に注力する企業も出てきた。

※1 net Zero Energy House(ゼッチ):断熱性能の向上や省エネ機器の導入でエネルギー消費を抑えると同時に、太陽光発電システムなどでエネルギーを発電し、エネルギー収支をゼロまたはプラスにする住宅のこと
※2 Home Energy Management System(ヘムス)」:家庭で使用している電力をモニターなどで可視化・制御することで節電効果を高めるシステム。日本政府は2030年までに全住宅へ導入することを計画している

建設

大阪万博やリニア新幹線など、まだまだ続く大型案件
働き方改革や女性の活躍が成長の大きな力に

【基礎知識】
建設工事を請け負う企業は、大きく分けて「土木」と「建設」がある。土木は、建設を行うための土台作りや道路・橋梁などのインフラ整備を担当。建設は、ビルなどの構造物を造り上げることに携わる。工事には、元請けのゼネコンから下請けのサブコンや専門事業者など、多くの企業が参画する。大型事業には、全体の計画・調査・設計を担当する建設コンサルタントが参画することも多い。

【展望】
首都圏の施設や日本各地の災害復興など、複数の需要が重なった建設ラッシュにより、業界は大きく成長した。今後も、全国の都市再開発や大阪万博、リニア中央新幹線、統合型リゾート施設(IR※1)といった大型案件が控えているほか、耐震・防災工事や道路・ダム・下水道といった社会インフラが更新時期を迎えることから、引き続き高水準の成長が予測されている。その一方で、浮上している課題が、労働力の確保だ。そこで、働き方改革の推進といった働く魅力作り、女性の活躍促進、外国人技術者の育成、ITやAIを活用した生産性の向上などが、今後の成長要因にあげられている。建設コンサルタントも好調で、海外需要が高まっている。

※1 Integrated Resort:カジノをはじめ、国際会議場やホテル、ショッピングモールといった施設を備えたエンターテインメント施設のこと

不動産

市場を牽引してきた都市部のオフィスビルと商業ビル
今後は2022年問題とグローバル戦略に注目

【基礎知識】
不動産業は、土地や建物などに関わる業界で、大きく3つに分類できる。「デベロッパー(不動産開発業)」は、土地を取得して、そこに商業施設やマンションなどを建設して事業を展開する企業だ。「不動産販売会社」は、建設された不動産物件の売買を行う企業。「不動産仲介業者」は、不動産物件を貸したい人と借りたい人の間をつなぐ役割を担う企業である。

【展望】
国内市場をリードすると見られているのは、引き続き都市部のオフィスビルと商業ビルだ。これに加えて注目されているのが、都市部にある生産緑地の動向である。2022年に優遇期間の30年を迎えることから、売却が一斉に始まると予想されており、大量に出回る住宅用地でどのようなビジネスが展開されるのか、楽しみだ。もうひとつ注目されているのが、海外展開である。東南アジアを中心とする新興国では、経済発展と人口増加で、不動産ニーズは必ず高まる。そこで大手各社は、日本で培った高レベルのノウハウをもとに、オフィス、商業施設、分譲マンション、賃貸住宅などを展開する戦略に着手しており、M&Aを含めた新たなステージが構築されると考えられている。

設備・建物管理

注目されるリフォーム・リノベーション市場
新規のビジネスフィールドとして海外にも注目

【基礎知識】
設備には、キッチンやバス・トイレなどの「住宅設備機器」、アルミサッシや木材などの「建材」、さらには「太陽光発電関連」などの製造業をはじめ、発電所からビルや一般家庭まで電力を送るための「送電線工事」、建物の「電気設備工事」「空調設備工事」「上下水道工事」などを担当する企業がある。建物管理は、ビルや病院、マンション、官公庁などのさまざまな現場で、清掃や設備管理、警備、防災といった業務を担当する企業だ。業態としては独立系のほか、不動産や金融の系列会社が多い。

【展望】
設備関連は、新築物件が減少傾向にあるものの、スマートグリッド構想※1に基づくエネルギー関連のインフラ整備や、災害復旧工事などが、業績を下支えしている。また、老朽化したビル・マンションや賃貸住宅のリフォーム・リノベーションといった改修・改造は成長要因として注目されており、各社とも対応を進めている。建物管理は、成熟した市場だが、一定の需要は引き続き存在する。こうした状況から激化する競争を勝ち抜くため、大手は総合サービスを強みに、中小規模の企業は特定の業務に特化することで業績の確保に努めている。このほか、設備・建物管理とも中長期的な国内需要は鈍化することから、海外進出の動きも始まっている。

※1 電力の流れをトータルに制御し、最適化する次世代送電網を構築しようというもの。現在の電力供給は発電所からの一方向だが、双方向を可能にし、ビルや家庭などで発電したクリーンな太陽光エネルギーなどを電力の不足地域へ供給。CO2 削減効果も期待されている

プラントエンジニアリング・環境エンジニアリング

活躍フィールドは幅広く、グローバルに
注目はエネルギーと水処理関連のビッグプロジェクト

【基礎知識】
プラントエンジニアリング会社は、プラント(製造工場・処理施設)の企画・設計から製造・設置・運転までをトータルに請け負う企業のことだ。プラントで生産するものは、電気、石油、ガス、鉄鋼、通信、化学、医薬、食品など、多岐にわたる。巨大プラントは国の発展に貢献するもので、社会に大きな影響力を持つ。環境エンジニアリング会社は、廃棄物処理や水処理システムなど、環境保全に大きく貢献している。日本のプラント・環境エンジニアリング技術は、海外でも評価が高く、事業フィールドは各社ともグローバルに広がっている。

【展望】
プラント建設には、広大な土地とプラントの常時稼働に適した周辺環境が必要になる。そのため、国内ニーズは、新規より既存設備の増強やメンテナンスが中心だ。一方、未開の地域や広大な土地が豊富にある海外では、石油や液化天然ガス(LNG)、シェールガス※1など、エネルギーに関連した巨大スケールの新規プラント開発を中心に需要が寄せられ、大手を中心に業績を伸ばしている。環境エンジニアリングも、海外を中心に多くの需要がある。中でも注目されるのが、上下水道や排水処理施設の建設、保守管理を行う水処理システムだ。新興国を中心に人びとの暮らしを支えるプロジェクトが官民一体で数多く進んでおり、市場は拡大している。

※1 従来のガス田ではないシェール層から採取される天然ガス。新しい天然ガス資源として注目されている

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サービス

サービス産業は、顧客のニーズを満足させる、有形・無形のモノや行為を提供する産業だ。ビジネスモデルは多彩で、さまざまな業界・企業が存在している。顧客は、常に新たなサービスを求めるため、そのニーズを的確にキャッチした新サービス・新ビジネスの創出により、業界の成長は続いている。これまでは、提供するサービスの内容が変化しても、産業の誕生から変わらなかったのは、人間が必ずサービスを提供してきたためだ。ところが近年は、サービス提供者としてAIやロボットが注目されており、業界は今後、新たな形に変化していく兆しも見えている。

フードサービス

「中食」など、社会ニーズをとらえたサービスで
今後も成長。海外の日本食ブームもプラス要因に

【基礎知識】
食に関するサービスを提供するのが、フードサービスだ。業界を構成するのは、家の外で食事を提供する「外食」、家で食べる惣菜や弁当を店舗で販売する「中食(テイクアウト/デリバリー)」と、企業や学校の食堂運営を請け負う「コントラクトフードサービス」だ。外食は「ファーストフード」「ファミリーレストラン」「ディナーレストラン」「喫茶」「パブ/居酒屋」に分けられる。業界は典型的な労働集約型のため、少子高齢化の影響で人手不足が常態化しており、外国人労働者の採用が目立ってきた。

【展望】
女性の社会進出や少子高齢化・少人数世帯の増加という社会変化を背景に、業界は成長を続けている。特に中食は、高齢者向けメニューのほか、塩分や糖分を控えめにした健康志向メニューなどが好調なのに加えて、手取り所得の減少や消費税の増税、新型感染症の蔓延でニーズが高まり、外食企業が進出する例も少なくない。市場は、今後も引き続き成長すると考えられているが、食に対する嗜好・流行は変わりやすく、業界に大きな影響を及ぼす。そこで、大手企業では消費者動向の調査に注力しており、メタボリック予防のダイエットメニューや、有機野菜・無農薬野菜だけを使用した新メニューの開発をはじめ、管理栄養士の食アドバイス、サブスクリプションなどの新サービス提供、さらには、店舗改装や業態転換などにも積極的に取り組んでいる企業もある。また、さまざまな日本料理の人気が世界中で高まっていることから、積極的に海外進出する外食企業も増えている。

映画・テーマパーク・アミューズメント

エンターテインメントへの要求が成長の追い風に
注目度が高まる、統合型リゾート施設の展開

【基礎知識】
体験型の「コト消費」ニーズを追い風にしているのが、映画・テーマパーク・アミューズメントといったレジャー産業だ。世の中の不確実性が増し、エンターテインメントへの要求が高まっていることを反映して業績は好調に推移している。映画業界を構成するのは、制作・配給・興行(映画館)を担当する各企業だ。テーマパーク業界は、膨大な資本力を持ち、広大なエリアを舞台に非日常的な体験を提供する。アミューズメント業界はレジャー産業の中核で、ゲーム、カラオケ、スポーツ、趣味、パチンコ・パチスロといった分野がある。

【展望】
映画は、人気アニメシリーズと日・米・アジアの映画がヒットし、好調を維持している。また、サブスクリプションサービスを導入したネット配信も本格化し、楽しめるチャネルが広がったことも成長を後押ししている。テーマパークも好業績で、各社とも新規アトラクションの導入や各種イベントを開催するなど、顧客の満足を獲得する取り組みが進んでいる。近年、アミューズメントの成長をリードしてきたのは、スマートフォンや家庭向け新型機に代表されるゲーム分野だ。その勢いは、今後も続くと予測されている。そして、最大の注目は、統合型リゾート施設(IR)だ。カジノばかりが注目されているが、IRはさまざまな魅力を備えたエンターテインメント施設であり、レジャー市場拡大の鍵を握ると考えられている。

マスコミ

インターネットの登場で収入構造が一変
各社で進む新たな収益モデルの確立

【基礎知識】
マスコミは、新聞、放送、出版といったマスメディアと、広告会社で構成される業界で、情報を制作・編集して人々に提供するビジネスを展開している。新聞は全国紙のほか、地域や特定分野に特化した情報を提供する新聞社が多数存在する。放送は、テレビ、ラジオ、衛星放送の3業態だ。出版は、作家と協力して情報や意見を、雑誌や書籍の形にまとめて読者に提供している。広告は、広告主の依頼を受け、テレビや折込チラシなどの多彩なメディアに広告を掲載する業務を担当している企業だ。

【展望】
従来、マスメディアは、自社メディア関連の売上と広告収入で業績を伸ばしてきた。ところが、ここ数年で広告出稿はマスメディアからインターネットへの移行が進み、収入に大きな影響を及ぼした。そこで、新たな収入源として自社保有コンテンツのデジタル配信や、映画などエンターテインメントへの出資を行っているほか、再度広告メディアとしての価値を獲得するため、魅力的なコンテンツ制作はもちろん、新規利用者の獲得に向けた新たなビジネスモデルの構築に努めている。広告業界は、こうした動きを見据え、AIやAdTech※1などの導入で最適な広告効果を実現し、引き続き存在意義を確保する取り組みを進めている。 ※1 Advertising(広告)とTechnology(技術)を合わせた造語。検索履歴などから対象広告に興味を持つ人を絞り込んでインターネット広告を表示し、広告効果を高める技術

旅行・ホテル

訪日外国人旅行客が引き続き、市場の成長を牽引
インターネットの活用やデータ活用にも注目

【基礎知識】
旅行業界を構成するのは、「旅行業」と「旅行業者代理業」だ。旅行業は、パッケージツアーなどを企画する企業で、海外・国内とも企画できる「第1種」、国内のみ企画できる「第2種」、一定の条件下で国内が企画できる「第3種」がある。旅行業者代理業は、旅行業が企画したツアーを代理販売する企業だ。ホテル業は、旅行者に宿泊用の客室を提供する事業で、「ビジネスホテル」、「リゾートホテル」、「シティホテル」などがある。

【展望】
日本人旅行客は微増ながら、訪日外国人旅行客は増加しており、事業は好調だ。短期には新型感染症などの影響もあるが、中長期では万博やIRなどが拍車となり、人気は続くと見込まれている。こうした中で注目されるのが、リーズナブルな価格を強みとしたインターネット専業の旅行会社が台頭してきたことだ。そこで、従来型の旅行会社もネット販売を始めたほか、旅行客ビッグデータの解析から、より魅力的な旅行を提案して利用者を獲得する動きが活発化している。旅行客増を受け、ホテルも第三次と呼ばれる大ブームが続いている。異業種参入や民泊※1なども始まっているが、供給量はまだ不足しており、今後も上昇傾向が続くと予測されている。

※1 戸建住宅やマンションの部屋などを旅行者に貸し出し、宿泊サービスを提供すること

教育

多様化する指導対象と教育内容
ITの活用も重要な成長ポイントに

【基礎知識】
教育業界は、情操教育や進学を目的とした「幼・小・中・高校生向け」と、キャリアアップや資格取得を目的とした「社会人向け」に分けられる。最近の変化は、大きく3つある。まずは、少子化の影響だ。学習塾や予備校の競争が激化し、指導スタイルが集団型から個別型へのシフトが加速している。次に、小学校の必修科目になったことから、英語とプログラミングの教育ニーズが一気に高まったこと。3つ目が、ITとインターネットの普及で、いつでも・どこでも学べるオンライン学習(eラーニング)が人気を呼んでいることだ。

【展望】
教育は今、少子高齢化が追い風になっている。少子化で1人にかける教育費が増加し、趣味を充実させたいアクティブシニアが積極的に教室へ通っているからだ。とはいえ、人口減少による市場縮小は避けられないことから、M&Aなどによる業界再編は進んでいる。今後の成長に向けて各社で進められているのは、魅力的な教育プログラムやシステムの提供だ。そこで注目されているひとつが、EdTech※1である。EdTechで画期的な学習が実現できれば、世界中に展開できることから、積極的に取り組んでいる企業が多い。その一環として、「自立型指導※2」により、成績向上とともに、思考力と積極性を育むことも強みとしてアピールする企業が増えている。

※1 Education(教育)とTechnology(技術)を合わせた造語。ITを応用して教育に変革を起こそうという取り組み
※2 IT機器を使用した自習で学習を進め、分からないところを発見して講師に質問したり、学習の進め方を相談して一緒に最適な方法を決めたりする学習指導法のこと

コンサルティング

いち早く時代に対応し、得意分野を強化
最適なソリューション提供で市場は今後も拡大

【基礎知識】
コンサルティング※1は、企業が抱える課題に解決法を提案する企業だ。得意分野によって分類され、企業の経営戦略などに強みを持つのは「戦略系」、ITを活用した業務改革やシステム導入などに取り組むのは「IT系」、財務や人事、金融など特化した分野を持つのは「専門系」、あらゆるテーマにトータルなソリューションを提供するのは「総合系」と呼ばれる。このほか、調査力を強みに官公庁からの委託調査や政策提言も行う「シンクタンク」、特許を専門に扱う「知財コンサルタント」などもある。

【展望】
多くの日本企業が今後の成長を見据えたとき、重要なテーマになってきたのが、グローバル対応だ。また、AIやビッグデータ解析、DXといった最新技術が、あらゆる業務に影響を及ぼすようにもなってきた。そこで、ソリューションを探究する動きが活発になっているものの、こうしたニーズに対応できる人材は一般企業の社内には少なく、育成する時間もないのが現状だ。そこで、明確な強みを持ち、最新の企業動向や技術にいち早く取り組み、緊急の課題に対して最適なソリューションが提供できるコンサルティングに業務を委託する機会が急激に増えている。日本における企業のコンサルティング利用は、欧米に比べて低いことから成長の余地は大きく、市場は今後ますます成長すると予測されている。

※1 コンサルティングファームと呼ばれることも多くある

人材サービス

優秀な人材を求める企業ニーズが市場を後押し
多様化する仕事観への対応などが成長の鍵に

【基礎知識】
人材サービスで、最も市場が大きいのは、就業希望者と雇用契約を結び、一定期間だけ企業に派遣する「派遣事業」だ。このほか、求人を開拓して就業希望者に情報を提供する「求人広告事業」、就業希望者の能力を評価して求人企業に適正人材を紹介する「職業紹介事業」、雇用した就業者を管理して依頼企業の業務を遂行する「請負事業」がある。この4事業に共通するのは、企業の人材ニーズと就業希望者の就業ニーズのマッチングに取り組んでいることだ。

【展望】
優秀な人材を確保したい企業ニーズは、少子高齢化社会でも変わらない。そのため、人材サービスの業績は好調だ。とはいえ、労働人口は確実に減少する。さらに、働き方改革、副業の解禁、自由な働き方を求める人材や高齢就業希望者の増大など、市場は常に変化している。この状況から今後の成長は、多様化する仕事観や新たなキャリアニーズにマッチするサービスの提供だと予測されている。また、減少する国内労働者人口を補完するビジネスのグローバル化にも注目。このほか、マッチングノウハウを応用したM&Aの仲介など、新たな領域への進出も予想されている。

高齢者サービス

高齢化社会を反映し、市場は年々拡大
成長を導く力として大いに高まる若者への期待

【基礎知識】
業界は、サービスの提供場所によって、大きく3つに分類できる。介護スタッフが高齢者宅に足を運ぶ「訪問型」、事業所に通ってもらってサービス提供する「通所型」、介護福祉施設に入所してもらって24時間365日を見守る「入所型」だ。高齢化率は2025年に30.0%に達し、市場は周辺ビジネスを含めて約21兆円になるとの試算もある。この拡大を見据え、M&Aによる事業規模の拡大や異業種の参入など、競争が激化している。その一方で、叫ばれ続けているのが、慢性的な介護スタッフ不足だ。

【展望】
介護スタッフ不足を解消するため、さまざまな施策が進められている。そのひとつが外国人有資格者の育成・採用で、東南アジアを中心に人材の受け入れが始まっている。また、勤務時間の短縮など、働きやすい労働環境の提供に努めている企業もある。もうひとつ注目されているのが、先進テクノロジーの導入だ。癒しを提供するコミュニケーションロボットをはじめ、高齢者の動きをアシストする機器や介護スタッフの身体に装着して介助をサポートするパワードスーツ、IoTやAIを取り入れたケアシステムなどの開発が進んでおり、現場に導入されたものもある。このほか、法律の改正をはじめ、新しい発想で、高齢者にも介護スタッフにも喜ばれる環境を創出し、市場の成長を導こうという取り組みが進められている。そこで、既成概念にとらわれない若い人たちの自由な発想に、期待する声が高まっている。

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その他

法人の中には、営利が目的ではなく、社会公共の利益を目的とする「公益法人」として、「社団法人」と「財団法人」がある。社団法人は誰でも設立できる自由度が特徴で、業界団体や医療機関、学校などが代表例だ。財団法人は個人や企業の財産を活用し、奨学金給付や研究費助成などを行う団体である。「行政機関」は、国や地方公共団体の行政事務を行う機関だ。その中で、国策の企画・実施に携わるのが中央省庁で、「1府(内閣府)12省庁」と、金融庁や公安審査委員会など16庁・8委員会から成る「外局」がある。また、行政活動のうち、実施の一部は国から独立した「独立行政法人」が担当する。独立行政法人には、「中期目標管理法人」「国立研究開発法人」「行政執行法人」がある。

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