メーカー
日本の製造業は、戦後70年の間、様々な困難を経ながらもイノベーションを起こして社会発展の牽引車となってきた。今、長い不況からの業績回復を果たし、次の飛躍に向けた動きを開始している。業界は徹底したコスト削減と構造改革でデフレ下を生き抜き、コスト競争力を鍛え上げてきた。過去最高水準の手元資金というエネルギー(資金余力)もあり、海外M&Aやリスクテークで新市場を開拓する力は十分ある。各業界、新市場に向けてスパートをかける。
電機・重電・家電・コンピュータ
原発事故を契機に市場トレンドが大きくシフト。業界は家電から総合電気、重電メーカーまで、省エネ技術や環境対応製品の訴求で国内市場の活性化を狙う。一方、海外展開では激化する韓国、中国勢との競争から戦略の見直しも
半導体・半導体製造装置
シリコンサイクルが2010年から上昇気運にある。各社はグローバル競争に備え、経営資源の集中、海外事業との提携や買収、事業委託など体力強化と環境整備に努め、2011年は攻勢をかけるはずだったが、目下、震災被害と電力使用制限の対応に奔走中。
電子部品
世界的にデジタル機器関連部品の需要が好調な電子部品業界。業績は好調で2008年の落ち込みからV字回復した。業界は、銀・銅など原材料価格の上昇やレアメタルの品薄を懸念しつつ、電子化の進む自動車部品の動向に注視している。
精密機器
コア技術の応用で医療機器への参入が増えている精密機器業界。高齢化がもたらす医療関連需要を狙ったこの傾向は今後も続く。デジカメは世界市場で圧倒的なシェアを有するが、激しい価格競争で収益は悪化。下位企業で淘汰と再編の兆しも。
工作機械
工作機械・産業用ロボットの受注が回復。中国市場の旺盛な需要に業界は勢いづいている。懸念材料は企業業績を圧迫する円高と、質より量と価格で攻める中国企業の存在。海外生産比率を引き上げ、開発力向上への投資など対応に努める。
建設機械
BRICS諸国を中心に需要増の建設機械は、国内、欧米でも更新需要やレンタルの増加傾向で業績好調大手3社は世界首位級クラスのシェアを誇り、準大手以下も特定機種に専門特化し、技術力と生産効率を高めて需要獲得に成功している。
化学・繊維
世界経済の回復で足元の業績は好調。化学では基礎製品分野への中国・中東の台頭に、戦略や事業構造を立て直し、高付加価値化の可能な機能製品分野に事業の主力を移行中。繊維は高機能繊維や樹脂など産業用繊維が好調。
自動車・二輪
東日本大震災を契機に供給ラインの二重化やグローバルサプライチェーンの見直し、部品の共通化の検討が始まり、車体構造、組立、部品等の生産体制の見直しにも着手している。各社、喪失シェアの奪還と更なる拡大に向けて販売戦略を構築中。
食品
原料価格の高騰が続く中、デフレ下の国内市場で価格転嫁ができずに収益性が低下。収益確保に向けた販売チャネルの多様化や事業多角化の努力が続く。一方、中長期の内需縮小をにらみ、商社とのアライアンスで新たな海外進出を狙う企業も。
飲料
大手4社すべてが国内外の酒類メーカーを傘下に持つ持株会社制のビール業界。M&Aで企業規模と商品陣容を拡大しながら攻勢をかける戦略で、海外市場を攻略する。業界プレーヤーの多い清涼飲料水は収益2極化、下位に吸収・統合の兆しも。
化粧品・生活用品
国内市場の飽和感に将来的な伸長も期待薄で海外に活路を求める両業界。化粧品では、製薬や食品業界からの参入が相次ぎ競争は更に激化、海外への注力度を強めている。生活用品は、高機能・高付加価値製品の投入で目下の内需を刺激する。
医薬品
製薬大手は、新薬特許切れ、2年毎の薬価改定による薬価切り下げ、昨今の急激な円高等で収益性が低下。活路を求めて後発薬市場への参入が相次ぐ。市場はプロパーに製薬大手、中堅、外資の参加で、企業間競争に熾烈さが増している。
鉄鋼・非鉄金属
鉄鋼業界は、新日本製鐵と住友金属工業の経営統合の動きに色めき立っている。実現すれば世界第2位のメーカー誕生となる。非鉄は金属価格の高騰で業績好調。資源獲得の国際競争激化で、原料確保に向けた海外鉱山開発・投資に注力中。
セメント・セラミック・紙・パルプ
内需は激減、今後の回復も期待薄で、アジアに舵を切るセメント、紙、パルプ。海外展開で収益を確保すべく、セメントは事業構造改革と人員整理で企業の体質改善を、紙・パルプは海外企業との提携、合弁、M&Aで競争力強化を推進中。